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歯根の治療(根管治療)の方法パート2〜洗浄剤と貼薬剤がなぜ必要か?〜

院長ブログ

みなさんこんにちは。
今回のブログは、歯根の治療(根管治療)は、無菌的処置の主役である機械的拡大に、脇役である洗浄剤貼薬剤を併用すると、より成功に導かれる、というお話です。

 

ここで、用語について、簡単におさらいします。機械的拡大は根の中の悪いところを削る、あるいはファイル等でかき出していくイメージです。洗浄剤貼薬剤は、抗菌作用を持つお薬です。洗浄剤は、機械的拡大を行った結果、ファイルでかき出せないところや削りカスを洗い流し、貼薬剤は、治療と治療の間に根の中を消毒することが目的です。
それでは、洗浄剤貼薬剤が、根の中の細菌を減らして、根管治療をより成功に導くために、どんな活躍をしてくれるか、みてみましょう。

Shuping(1)らは、根管を機械的拡大のみ行った場合(2)(緑のライン)と、洗浄剤(1.25%次亜塩素酸ナトリウム水溶液)を併用しながら、根管を機械的拡大し、最後に水酸化カルシウムで貼薬した場合(青いライン)で、歯根の中にいる細菌がどのくらい減少したかを細菌培養検査で比較しました(図1)。
図1において、X軸は機械的拡大前・中・後を示し、Y軸は細菌の量を対数で表しています。
オレンジのラインは、対照として、もともと根管が細菌に感染していない場合です。
緑のラインは、細菌が減少しているもののグラフの傾きは小さくなっているのに対し、青いラインは傾きが大きく、細菌がどんどん減少しています。

図1のグラフ中の吹き出し:61.9%と92.5%について説明します。これは、根管にいる細菌を培養した結果、細菌を認めなかった(陰性だった)歯のパーセンテージを示します。陰性だった歯は、S4の時(機械的拡大+次亜塩素酸ナトリウム水溶液)に61.9%、S5の時(水酸化カルシウムで根管を貼薬した後)に92.5%でした。
機械的拡大単独よりも、機械的拡大洗浄貼薬の方が、細菌は大幅に減少することがわかりました。歯根の先にできた膿、あるいはレントゲンで見られる黒い影(根尖性歯周炎)や、虫歯が大きくなり歯が痛くなる原因は、細菌です。歯根の中にある細菌を減らせば、根管治療は限りなく成功に近づけます。
よって、根管治療には、機械的拡大洗浄貼薬という方法があり、それぞれの長所を生かしながら、短所を補いながら奏功させて、結果につなげていきます。

では、機械的拡大洗浄剤で、実際どのくらいきれいになるか、治療中の写真をお見せします。

パッと見ただけでも、図2より図3の方がキレイだなぁ、と思う人は多いと思います。
黄色い矢印は、根の入り口(根管の入り口)です。
図2は悪いところをまだ取っていない拡大前の状態です。所々に見られる黒いものは汚れで、どこに根の入り口(根管の入り口)があるのか、矢印の先をみても、よくわからない状態です。図3は機械的拡大と洗浄剤を併用して、悪いところを取りきった状態です。図2で所々に見られた黒い汚れを取ったら、根の入り口(根管の入り口)がはっきりとわかるようになりました。

以上より、根管治療の方法には、機械的拡大洗浄貼薬が必要です。
もちろん、環境設定は大切です。ラバーダム防湿きちんと滅菌管理された器具歯の消毒といった、無菌的処置歯の中に細菌を入れさせない処置を行った上で、根管治療を行い、細菌をやっつけて、成功に導きます。

 

ところで、今回のブログを読んで、以下のような疑問を持つ方がいらっしゃるかもしれません。

  1. 次亜塩素酸ナトリウムや水酸化カルシウム以外の薬だったら、もっと効果があるのではないか?
  2. 次亜塩素酸ナトリウムの濃度をもっと濃くしたら、より殺菌できるのではないか?
  3. 酸化カルシウムの貼薬期間をもっと長くしてみてはどうか?
  4. 根管の中は無菌化できないか?

等々。このような各論については、次回のブログでお話しします。

 

今回まで、数回に分けて根管治療の総論的なお話をしました。
「歯内療法って何?」
「歯根の先に膿(根尖性歯周炎)を作らない、そして治すための、基本コンセプトって何?」
「歯根の治療の方法パート1〜機械的拡大について〜」
「歯根の治療の方法パート2〜洗浄剤と貼薬剤がなぜ必要か?〜」

 

次回は、各論的な内容に迫ります。
お楽しみに。

 

  1. Shuping, George B., et al. “Reduction of intracanal bacteria using nickel-titanium rotary instrumentation and various medications.” Journal of endodontics12 (2000): 751-755.
  2. Dalton, B. Clark, et al. “Bacterial reduction with nickel-titanium rotary instrumentation.” Journal of endodontics 24.11 (1998): 763-767.